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浪漫的如夢

しの血統の所業を教

、ぱっくりと二つに割られた頭蓋骨がぎっしりつまっていようとは! この悪夢のような洞窟に、過去数千年にわたって、ピテカントロプス、ケルト人、ローマ人およびイギリス人の骸骨が、ところ狭きまでにぎっしり詰まった穴もあって、その穴の本来の深さはいったいどれくらいあったのかということは、だれにも見当がつかなかった。その他緊膚の穴は、一行の懐中電燈で照らしてみても底が知れないほどあって、そこには名状すべからざる動物の飼育者どもが住んでいたのだ。暗闇のなかに餌を探し回って、この恐ろしい底なし地獄の罠にかかった不幸な鼠どもは、いったいどうなったのか?
 一度わたしは、大きく開いた恐ろしい穴のふち近くで足を踏みすべらし、一瞬気が遠くなるほどぞっとした。そのまま長いことじっとぼんやりしていたにちがいない。というのは、ふと気がついてみると、一行のうちで、あの肥ったノリス大尉のほかには、だれの姿も見えなかったからである、と、そのとき、あの黒々とした無限の遙かかなたより、なにか聞き覚えのあるような音が聞こえてきたと思ったとき、年老いたあの黒猫が、まるで翼のあるエジプトの神のように、未知の無限の深淵めがけてさっと飛びこんで行った。が、わたしもぐずぐずしてはいなかった。というのは、つぎの瞬間、たちまち、事情がはっきりとしたからである。たったいま聞こえたもの音というのは、あの悪魔のような鼠どもが、ちょこちょこ走り回る足音で、こいつらは、いつも恐ろしいえものを新規に探し求め、結局わたしを、この地中の奥深くにある洞窟のなかへ引き入れようとしたのだ。そしてその地中の奥には、気の狂ったのっぺらぼうの神ニャルラトホテプが、暗闇のなかで、一定の姿を持っていない二人の白痴の笛吹きの笛の音にあわせて、でたらめな声をはりあげているのだ。
 わたしの携帯していた灯は消えたが、なおもわたしは走った。人の声と動物の叫びと、あのこだまするもの音が聞こえたが、とりわけ、あのいやな陰険きわまるとんとこ小走りに走り回る足音が高まってきた。ゆっくりと、だが、しだい孕婦飲食しだいに、それは丁度、硬直した死体が、無限の縞瑪瑙《しまめのう》の橋の下を、暗い腐った海に流れる油の川に浮かんだまま、のっそりと起きあがってくるように、いかにも柔らかに高まってきた。
 なにかどしんとわたしに突き当たったものがある――なにか柔らかくて丸々と肥ったものが。鼠どもにちがいなかった。死んでいようと生きていようと、人間の体に食らいつく、あのねばりけのある、にかわ質のすき腹でがつがつした大群にちがいなかった。……ド・ラ・ポーア家のものが禁断の人肉を食べるように、鼠どもだって、ド・ラ・ポーア家の一員たるわたしを食べてもよさそうなものではないか?……今度の戦争は、いまいましくも、わたしの息子を犠牲にした……それからヤンキーどもは火をつけてカーファックスを犠牲にして、祖父のデラポーアと秘密のいい伝えとを焼きほろぼし……いやいや、いいか、わたしは薄明りのさすあの洞窟のなかにいる悪魔のような豚飼いじゃない! あのぶよぶよと柔らかい、二足獣から退化した四足のけものの顔は、ノリス大尉の肥った顔じゃなかった! だれだ、わたしがド・ラ・ポーア家のものだというのは? ノリスは戦争から生還したが、わたしの息子は死んでしまった。……ノリス家のものが将来ド・ラ・ポーアの土地をとるようになるだろうか? いいか、それはヴードゥー教なんだ……まだらの蛇……ソーントンの畜生め、きさまにわえて、また気絶させてくれるぞ! ええい糞、鼻っつまみものめ、人間の肉の味わいかたを、さあ伝授してやろう……うおるでいい、すいんけみい、しるけういす? マグナ・マータ! マグナ・マータ!……アティス……デイア・アド・アガイドス・アド・アオダウン……アーガス・バス・ドナーク・オルト! ドーナス・ドーラス・オルト、アーガス・リート=サ! ウングル……ウングル……ルルルー……ククク……
 みんなにいわせると、あれから三時間ののちに、暗闇のなかで一行がわたしを見つけたときに、わたしはいまいったようなことをしきりにしゃべっていたそうである。わたしは真暗闇のなかで、丸々と肥った、体半分食いつくされたノリス大尉の上にしゃがみこんだ姿勢のまま、あの黒猫に飛びかかられ、喉にかぶりつかれているところを見つけだされたのだそうである。さて彼らはイグザム修道院跡を爆破して「黒んぼ」をわたしから引き離すと、このハンウェルの地にある座敷牢にわたしを閉じこめ、わが家の血統とその所業とについて、ひそひそと恐ろしい噂ばなしをかわしているらしい。ソーントンはとなりの部屋にいるのだが、彼らはどうしてもわたしに、ソーントンと話をさせない。彼らはまた、修道院に関するさまざまな事実を、このまま秘密に葬ってしまおうとしている。あの気の毒なノリスのことをわたしが口にすると、貴様はほんとにひどいやつだ、とみんなわたしのことを非難するが、あれは断じてわ防皺たしではない、とぜひ彼らも知らなければいけない。今後とも、その足音で、わたしに安眠をさせることのあるまいと思われるあの小走りにとんとこ駆け回る鼠どものやったことなのだ。この部屋の壁のうしろを走りまわっては、これまで経験したこともない恐い気分にわたしを誘いこむ、あの魔物のような鼠どもがやったのだ。学者たちには足音の聞きとれない鼠どもの仕業《しわざ》なのだ。鼠どもだ、壁のなかの鼠どもの仕業なのだ。
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