のがあった

重大すぎる意味があると考えられる。その結果搬屋公司收費、チャールズはなにかを呼び出す術を学びとり、そのなにかが、招きに応じて出現したにちがいない。聖金曜日の出来事。そのときひびきわたった力づよい大声。鍵をおろした実験室の内部に、声音のちがう問答が聞こえていた事実。それらのすべてが、この推定を裏付けている。そこに突如、妖鬼じみた低音でしゃべるアレン博士が登場した。彼ははたして人間であろうか? ウォード氏にしても、電話でその無気味な声を聞いただけで、漠然とながら恐怖感に襲われたものであった。
 鍵をおろした実験室のなかの声は、チャールズ・ウォードの呪文に応えて、地獄の底から匍《は》い出てきた幽鬼のものとしか考えられぬ。そのとき、洩れ聞こえた言葉に、「この三ヵ月のあいだ、血で染めておかねばならぬ」という。それがちょうど、吸血鬼の騒ぎの起こる直前ではなかったか。エズラ・ウィードンの墓地の発掘、ポートゥックストの深夜の絶叫――それはみな、過去の復讐の鬼が、涜神の座をふたたび占めようとしている証拠でないのか。別荘と顎ひげの男、そして風評、そして恐怖。チャールズの最後の狂気は、父親にも医師にも説明が困難だった。しかし、両者ともに、ジョゼフ・カーウィンの魂がいままた劉芷欣醫生地上に出現して、かつての邪悪な所業の継続をはかっていると確信するにいたった。悪鬼に憑《つ》かれた男の古伝説も、あながち虚妄ではなかったようだ。そして、アレン博士がこれに関連しているのは疑いない事実である。青年の生命を脅かしているこの人物について、可能なかぎり多くの情報をつかまねばならぬ。この方面の作業は、私立探偵たちを督促して行なうとして、一方、ポートゥックスト別荘の地下に巨大な穴ぐらの存在することは、論議の余地のないところである。ウィレット医師とウォード氏は、精神病理学者たちの懐疑的態度を意識しながらも、この探険に踏みきり、二人手をあわして徹底的な捜査を行なおうと、協議一決した。そして翌日、必要な道具その他を詰めたカバンを携帯のうえ、ポートゥックスト別荘で落ちあうことを打ち合わせた。
 四月六日の朝は、よく晴れていた。二人の探険家は、正十時に、別荘の玄関で落ちあった。鍵はウォード氏の手にあったので、屋内へは簡単に入りこめた。アレン博士の部屋のとり散らされた様子から、私立探偵たちが熱心な調査を行なったのがわかった。報告はまだ受けとっていないが、有力な手がかりを発見していればよいがとねがった。それはそれとして、彼ら二人の主たる作業は、地下の秘密の場所をつきとめるにあったので、ためらうことなく地下室へ降りていった。
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