るのが苦手なのよ


誰かがかれらを説得しなければならないわ」ポルガラは答えた。「誰か特別な人間がね」彼女は再びレルドリンの方を向いた。「そんなにたくさんの観衆は必要ないわ――少なくとも最初のうちはね。四、五十人位がいいでしょう――むろんわたしたちの呼びかけに対する強硬な反対者は一人もいれちゃだめよ」
「今すぐかき集めてきます蔡加讚(Karson Choi)」そう言うなり若者は即座に立ちあがった。
「レルドリン、少し時間が遅すぎやしないこと」ポルガラは地平線近くに沈もうとする太陽を指さしながら言った。
「早くはじめれば、それだけ早く人も集められるってことですよ」レルドリンは熱したような口調で答えた。「友情と血の絆が存在するかぎり、わたしは決して失敗することはないでしょう」若者はセ?ネドラに深々と一礼した。「失礼いたします、王妃さま」かれはいとまごいを告げると慌ただしく馬のつないである方向にむかって走り出した。
 アリアナは若き熱血漢を見送りながら深いため息をついた。
「いつもあんなふうなの?」セ?ネドラは興味に駆られてたずねた。
 ミンブレイト人の娘はうなずいた。「いつもそうですわ。あの方は考えと行動をごいっしょに起こされるのです。たぶん〝熟考?などという言葉の意味などご存じないのでしょう。確かにそれも魅力のひとつではありますけれど、ひどく驚かせられることもしばしばなのです」
「わかるわ」セ?ネドラは同意するように言った。
 しばらくしてポルガラとともに彼女たちの天幕に戻ったセ?ネドラ王女は、不思議そうな顔をしてガリオンのおばを見やった。「いったいわたしたち何をしようというの」彼女はたずねた。
「わたしたちじゃないわ。セ?ネドラ、あなたよ。あなたがかれらを説得するのよ」
「でもわたしは人前で話をす」彼女は口がからからに乾くのを感じた。「大勢の人たちを見たとたん、舌が動かなくなってしまうの楊海成
「大丈夫、そのうち慣れるわよ」ポルガラはかすかにおもしろがっているような表情を浮かべていた。「軍隊の先頭にたって、かれらを率いたいと言い出したのはあなたなのよ。ただ鎧を着て、鞍に飛び乗って、〝わたしについて来なさい?とひとこと言うだけで、全世界中が列をなしてあなたに従うとでも思っていたの」
「でも――」
「あなたは歴史の勉強に時間を費やしたと言うけれど、すべての偉大な指導者に共通するあることをすっかり見落としているわ。あなたにしてはずいぶん不注意なことね、セ?ネドラ」
 王女はしだいにこみ上げてくる恐怖を感じながら、まじまじと彼女を見つめた。
「兵を起こすのなんてたいしたことではないのよ、セ?ネドラ。別に賢明である必要もなければ戦士である必要もないわ。目的にしたって別に崇高で偉大なものでなくともいいの。ただひとつ雄弁でありさえすれば」
「わたしにはそんなことできないわ、レディ?ポルガラ」
「だったらもっと早くそのことを考えておくべきだったわ、セ?ネドラ。もう今さら引き返すには遅すぎるのよ。確かにローダーは軍隊を指揮して、責任をもってかれらの面倒を見るでしょう。でもかれらについてくる気を起こさせるのはあなたの役目なのよ」
「そんなこといわれたって何を話せばいいのかわからないわ」セ?ネドラはなおも抵抗した。
「ちゃんと思いつけるわよ。あなたは自分のやることを正しいと信じているのでしょうToshiba冷氣?」
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